Group Exhibition「SILVER LINING / 銀の裏地」

2025.12.16-12.19|Group Exhibition「SILVER LINING / 銀の裏地」

シンガポールのアートシーンを牽引する作家が一堂に会する本展は、単なるグループ展の枠を超え、物質と記憶をめぐる濃密な対話の場となっている。
藍染めのファブリックを包んだ立体に、光の粒子のように走る白糸の刺繍が印象的な繊細な手仕事は、自然界の移ろいやすい瞬間や光の揺らぎを物質として永遠に定着させようとする、祈りにも似た静謐な行為に映る。
規則的に穿たれた穴が画面を覆う多層的な平面作品、そして古い書物やテキストの上に抽象的なイメージを上書きしたミクストメディア。
情報の集積と欠落、あるいは歴史の改変といった現代的なテーマを、視覚的なレイヤー構造を通して鑑賞者に問いかけているようである。
東南アジア独自の空間美学や人間の内面世界への眼差しが、展示空間に思想的な骨格を与えている点も見逃せない。
彼らの多くがラサール芸術大学などで教鞭を執る教育者である事実は、本展に漂う理知的な緊張感と無縁ではないだろう。
彼らの表現の底流には、自己の表出にとどまらず、伝統やアイデンティティを批評的に解釈し、次代へ継承しようとする強い意志が感じられる。
銀白色に輝く無機質なマチエールから、植物の根を連想させる有機的な線描の絡まりまで。
異なる技法と哲学が響き合うこの空間で、作家たちが提示する「世界の手触り」を、ぜひその目で確かめていただきたい。

作品展について

2025年12月16日(火)〜12月19日(金)10:30-17:00

作家プロフィール

NADIA OH

シンガポールを拠点に活動するヴィジュアルアーティスト。
ロンドン大学ゴールドスミス・カレッジにてファインアート修士を取得しており、その詩的で細やかな作品は、自然の光と影が織りなす刹那的な瞬間からインスピレーションを引き出すことを目的としている。
作品にはリトグラフやアクアチントの版画、彫刻、インスタレーション、布への写真プリントと刺繍が含まれ、多岐にわたる技法が用いられている。
東南アジアを中心に、シンガポール、マレーシア、台湾、日本、韓国、タイ、ニュージーランド、アイルランドなどで展覧会を行い、慈善オークションで評価を得るなど国際的な活動を展開している。
シンガポールのラサール芸術大学、マクナリー・スクール・オブ・ファインアーツにて講師を務め、次世代のアーティスト育成にも携わっている。

https://www.nadiaohsp.com

SALLEH JAPAR

シンガポールを代表するコンテンポラリーアーティスト。
彫刻、インスタレーション、絵画を横断する幅広い表現を通じ、アイデンティティと伝統の交差を問い続けている。
1980年代後半にゴー・イー・チューやS・チャンドラセカランと共に発表した展覧会「トリムルティ」がシンガポール現代美術史において重要な位置を占めることとなり、1990年代から2000年代にかけて国際的な展覧会にも多数参加した。
また、2001年には初めてのシンガポール館としてのヴェネツィア・ビエンナーレに代表アーティストとして選出され、その劇的なインスタレーション作品を通じて歴史と文化の交差点を探求した。
教育者としてはラサール芸術大学で上級講師および学部プログラム・リーダーを歴任している。
研究テーマは東南アジア美学、特にマレー世界の空間象徴やクラフト技術の理論的解釈であり、伝統と現代の対話を作品に反映している点が特徴である。

https://en.wikipedia.org/wiki/Salleh_Japar

ERZAN ADAM

アーティスト・教育者。
ラサール芸術大学のマクナリー・スクール・オブ・ファインアーツにてディプロマ・イン・ファインアーツ・プログラムのプログラム・リーダーを務めるなど、教育活動と創作活動を両立している。
ラサール=SIA芸術大学で優秀学生賞を受賞し卒業後、オーストラリアのタスマニア大学でコンテンポラリーアートを学び、同大学のディーンズ・ロール・オブ・エクセレンスに選ばれた。
さらにラサール芸術大学でMFA(美術修士)を取得している。
作家としての制作は抽象表現を基軸とし、テキストとイメージの関係、翻訳、アイデンティティ、社会史、精神性といったテーマを探求している。
受賞歴にはUOBペインティング・オブ・ザ・イヤーやゴー・チョク・トン・ユース・プロミス・アワードなどがある。
近年は地域コミュニティの声を掘り起こすリサーチベースのプロジェクトにも取り組んでおり、抽象と社会的責任を接続するアプローチが特徴的である。

https://ohopenhouse.org/AAP-2022-Erzan-Adam

SIMON NG

フィギュラティブな絵画とコンテンポラリー・アートを主体に活動するアーティスト。
初めはグラフィックデザインを学び、その後30歳を過ぎて絵画制作へ転向した。
オープン・ユニバーシティ(英国)とラサール芸術大学の連携プログラムにてファインアートの学士号(ファーストクラス・オナーズ)を取得し、制作と研究を深めた。
ウィンストン・オー・トラベル・グラントやウィンストン・オー・ポストグラデュエート・ファインアート・リサーチ・ファンドなど複数の助成を受けている。
作品は人物像を中心に、人間の状態や欲望、記憶に根差したイメージを描き、その象徴性と空間表現のバランスにより、観る者の内面へ問いを投げかける。
シンガポール、マレーシア、フィンランドなどで多数の展覧会を行い、作品はストックホルム、オスロ、シンガポールのコレクションにも収蔵されている。
教育者としてラサール芸術大学で非常勤講師も務めている。

https://www.simonng.sg

CEDRIC VAN EENOO

混合技法やコラージュを用いたキャンバス作品を中心に制作するアーティスト。
キャンバス上に多様な素材を組み合わせる実験的なアプローチが特徴である。
作品は形態や色彩の抽象的構造を追求しており、伝統的な画面構成の枠を超えた多層的な視覚体験を提示する。
それぞれの作品は偶然性と制御されたデザインが交錯する独自のビジュアル言語を持っており、制作における探究心と素材への深い関心がうかがえる。

https://www.vaneenoo.com

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