弘瀬美羽 日本画作品展「旅路」

2026.03.03-03.08|弘瀬美羽 日本画作品展「旅路」

4年間の集大成が、確かな色を纏って空間に広がっている。
京都芸術大学で日本画を専攻した弘瀬美羽の作品展は、彼女が国内外で積み重ねてきた旅の軌跡そのものだ。
ヴェネツィアの海面、トスカーナの街角、日本の鳥居、そして各地で出会った人々の素朴な生活態 — 会場にはそうした風景が、岩絵具と金泥の質感を纏って静かに佇んでいる。
素材は伝統的でありながら、その筆致にはどこか風が通っている感じがあり、見ていると知らず知らずのうちに異国の空気を吸い込んでいる感覚になる。
中でも目を引くのは、画面を満たす深い青の存在感と、建築物が持つ細部への執着である。
記憶の中で自然と柔らかくなったような光が、鉱物由来の粒子と混ざり合い、誰しもが一度は感じたことのあるノスタルジックな触覚を静かにくすぐる。
宗教画というフレームの中で弘瀬が描いてきた理由。
それは、グローバル化が加速する世界の中で自らの立ち位置を問い続けるためだったのかもしれない。
様々な土地の信仰や祈りの形と向き合いながら、彼女は同時に「自分とは何か」という問いをキャンバスに塗り込め続けてきた。
旅先で目にした景色を、忘れてしまう前に手元に引き寄せようとする、切実でどこか愛おしい行為の堆積。
完成された大作の脇でひっそりと並ぶドローイングもまた、作品の背後にある作家の眼差しを、言葉よりも雄弁に伝えている。
画面に重なった記憶の層は、データや写真では代替できない何かを宿している。
それは実物の前に立ったとき、初めて皮膚感覚として届いてくるものだと改めて思う。

作品展について

2026年3月3日(火)〜3月8日(日)10:30-17:00
入場無料

大学4年間で私は色々な「旅」をしてきました。
卒業が近づいた今、集大成としてそこで見た景色や体験を描いた作品を展示します。

作家プロフィール

弘瀬美羽

京都芸術大学 美術工芸科日本画コース四年
グローバル化によって文化が混ざり合いやすくなった現代において、宗教画という視点からアイデンティティを改めて見つめ直すことを目的に制作を行う。

Instagram
https://www.instagram.com/_hika.09_/

TOP