2025.11.25-11.30|日本画二人展「包摂」弘瀬美羽 水野遼香
日本画を学ぶ二人の学生作家が、それぞれの視点から「祈り」や「意味」といった根源的なテーマに向き合った作品を展示している。
1階に並ぶ弘瀬美羽の作品は、イタリアで目にした宗教建築や街並みがモチーフになっており、塔や礼拝堂のストライプ柄の壁、青空の広がり、そっと並ぶ人々の横顔などが、岩絵具や顔彩の柔らかなグラデーションによって構成されている。
光と空気を含んだ質感の中で、祈りに満ちた空間を包む時間の厚みが静かに息づき、見る人を遠い異国の文化と信仰の記憶へと優しく導いていく。
2階で展開される水野遼香の作品は、世界が形成されていく瞬間をとらえたかのようなダイナミックさをたたえている。
渦を巻く光、響き合う水、色彩が折り重なることで花の姿が立ち上がるイメージなどが描かれ、集まりが秩序をつくり、やがて意味を帯びていくという流れが、宇宙と身体のリズムの両方を思い起こさせる。
存在が生まれる瞬間のエネルギーを、抽象的でありながら親密な感覚で伝える作品である。
「私たちはどこから来て、何を信じ、どのように意味をつくりながら生きているのか」という静かな問い。
祈りの記憶と、世界が形づくられる瞬間の力。
それらが意識の中で混じり合ったとき、観る者の中に自身のアイデンティティや存在の根幹を見つめ直したくなる欲求が生まれるかもしれない。










作品展について
2025年11月25日(火)〜11月30日(日)10:30-17:00
入場無料
作家プロフィール
弘瀬美羽
世界では、宗教における「祈り」という行為が、国や地域の文化や思想の形成に大きな影響を与えてきたと私は考える。
グローバル化によって文化が混ざり合いやすくなった現代において、宗教画という視点からアイデンティティを改めて見つめ直すことを目的に制作を行う。
今回の展示では、今年2月末から3月頭にかけて訪れたイタリアでの風景や美術品から得たインスピレーションをもとに制作した作品を展示する。
水野遼香
人間と社会文化形成に興味を持ち、手を動かし絵を描くことを通じて、自分自身の営みがどのような意味を持つのかを探究している。
最小単位から集合して構成、秩序が生まれるまでの過程から「意味」を持ち始める瞬間を捉えたいと考える。
それは人間の体を作る細胞とも社会を構成する一人一人ともいえる。
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